【算数】 中学受験に必要な学力とは

中学受験に必要な学力

中学受験に必要な学力って何でしょう。

正確で素早い計算力?

筋道立てて考える力(論理力)?

図形的センス?

 

どれも大切ですが,これ一つあればいいというふうにしぼれるものではありません。そうそう,学力という範疇に含むと違和感が生じるかもしれませんが,集中力や粘り強さももちろん,あったほうがいい力です。

 

これらの力を授業や家庭学習で鍛えていったものが算数の学力ということになるかと思いますが,中学受験において最近その必要が増してきたものに「読解力」「論述力」があります。

 

神戸大学附属中等教育学校の適性検査では,けっこうな長文が出ることがあります。

文章を読んで,

ルールを理解し,

ルールに則って

条件を満たす解を探す

なのですが,読解力がなければスタートの段階でつまずいてしまうことになります。

 

いっぽう論述力は,近年の中学入試で増えてきた「なぜそう考えられるのか説明しなさい」という出題に答えるうえで必要になってきます。

 

数学の証明問題のように「仮定→結論」というような定型を踏む必要はありません。

しかし,自分のアイディアを他人が読んでわかるレベルの文章にするには「国語力」以上のものが必要になってきます。

 

というのは,一定以上の「国語力」のあるお子さんでも「これぐらい書かなくてもわかるやろ」と説明を端折り,結果的に独りよがりの答案になってしまうことが多いからです。

「あなたには自明のことかもしれない。でも,そこが説明できていなければ答えとして不完全なんだよ」

こう言い続けなければいけません。

 

「相手の立場に立って考える」というのは「力」というより姿勢の問題ですが,誰も1人では生きていけないわけですから,絶対に必要なもののひとつだと考えます。

 

 

論述力を問う

2019年六甲学院中学の入試問題

 

 論述力について興味深い問題が今年度の入試で出ていましたのでご紹介します。

 

9 次の(1),(2)の問いに答えなさい。

 

(1) 120×8-16×55を計算することで答えが得られるような文章題を1つ考え,その意味が正確に伝わる言葉づかいで問題文を書きなさい。ただし,120×8と8×120のような,かけ算の順序のちがいは考えなくてかまいません。

(2) (1)で作った問題において,120×8および16×55はそれぞれ何を表しますか。

  意味が正確に伝わる言葉づかいで書きなさい。

 

 

 解答(藤岡教室の出口が作成したものです)

(1) ヒロシくんは毎分120mの速さで学校に向かいましたが,8分後にくつに穴があいてしまったので,家にもどることにしました。足が痛くて毎分55mの速さでしか歩けません。家にもどり始めてから16分経ったとき,ヒロシくんは家から何m離れたところにいますか。

(2)120×8は,もどり始めた地点から家までの距離。

  16×55は,家に向かってもどった距離。

 

 これは発想の奇抜さや面白さを問うものではないのですが,以下のような答案があったとしたらどう採点したのでしょうか。

 

 

1) 足が8本あるP星人が120人,足が16本あるQ星人が55人います。P星人対Q星人でそれぞれの足の本数の合計を競うことにしました。P星人の足の合計本数はQ星人の足の合計本数より何本多かったでしょう。

(2) 120×8 …P星人の足の合計本数

        55×16 …Q星人の足の合計本数

 

 問題として成立しています。

「P星なんて実在しないから×」などという採点基準ではないでしょう。

では,どこを採点者は見るのでしょうか…?

 

たとえば,(2)で120×8を「P星人の足の数」としたらアウトなのでしょう。

答えた本人は合計本数のつもりでも,単に「足の数」ときかれたら1人分の「8本」と答えてもかまわないはずです。

中学入試に限らずすべての入試問題は複数の解釈ができないように(解が一つに定まるように)細心の注意をはらって作られています。

「同じことができますか?」という問いで,あいまいな表現を一切廃した「正確な」問題文の表現が要求されているわけです。

出題者の意図を正確に理解する力が,ここでは問われています。

 

 

学力の礎となる「相手の立場で考える力」

「相手の立場になって考えろ」などと言うといい子ぶっていると思われそうでやや気恥ずかしいですね。

ただ教育改革でも重視される「協働性」は他者と力を合わせて目標を達成するために活動することす。

相手の立場に立つことなしには考えられません。

 

また,相手の立場でものを考え,そのうえで行動する人にはたくさんの人が味方になってくれます。

まさに,「情けは人の為ならず」。

塾だけではなく,学校でも,家でも,他者の立場になって考えるということを大事にしていきたいものです。

藤岡教室四谷大塚NET板宿本部校

出口 弘

講師紹介はこちら

藤岡教室についてはこちら