【中学受験】 男子校エレジー

 USJにてある男女の会話。

女性「ねえねえ次何に乗ろっか。何に乗りたい?」

男性「JR」

 

 男性は行列に並ぶのがしんどくて疲れ切っていたようですが、それにしても100%嫌われる返事です。

 女子の気持ちがわかっていないこと甚だしい。

 当女性による「何か上手いこと言ってやった的な表情が殺したいほどムカついた」との証言もあります。

 なお、この発言の主である男性は男子校出身とのこと。

 「疲れたので帰りたいが、ストレートに言うとまずいと思ってユーモアというオブラートで包んだ」と、痛すぎるコメントを発しています。

 

「あらあらうちの息子がそんなふうに女の子の気持ちもわからない野暮天(古い表現やな)に育ってしまうのなら、やっぱり男子校はやめといたほうがいいのかしら」と思ったみなさん、お待ちください。

 

 彼が野暮天なのは、男子校のせいではありません。

 

 もともと小学生の時から一言多い性格が災いして女子にもてなかった彼は、もてない癖に自意識が過剰で女子の目が気になって気になって仕方がありませんでした。

 女子が集団でどっと笑っていると「自分が笑われているのでは」と思って自分の服装を確認したりしていました。

 

 そんな彼が中高一貫の男子校へ進んだのはむしろ大正解。寝癖を気にせず、服装はオカンが買ってきたものでOK。好きになった女の子が実は親友のことが好きで悶々とするなんてありがちなシチュエーションに心を乱されることもなく、やや傾いているかもしれないがまっすぐに育つことができたのは男子校のおかげといっても過言ではないでしょう。少し鈍感なくらい何ですか。彼が無事に大人になってUSJデートにこぎつけている点に気づいてあげてください。

 

 これは中高の多感な6年間にひがみや妬み、ルックスへの絶望や体型へのコンプレックスといったマイナスの感情をあまり持たずに生きてこられた賜物なのです。言うまでもなく、共学校では得られなかったものです。あ、間違えないでいただきたいのですが、男子校にもその道の達人は必ずいて、女子校や共学校に通っている彼女と付き合っていました。大学に進んですぐに彼女ができるのもいます。全員が不器用でもてないわけではありません。

 

 保護者の方からご相談を受けたとき、男子校向きの性格、向いてない性格というのは特にないとお答えしています。

 女子なんかいないほうがいいと思っている男子も、女子がいないと生きていけないと思っている男子も、ほとんどいないからです。入ってしまえば環境にはいずれ馴染んできます。

 

 では、6年間を過ごす環境としてはどうか?

 

 男女のどちらかしかいないというのは決して自然な環境ではありませんが、逆に言えば同い年の人間ばかりの集団というのがすでに「不自然」なわけで、それなら男子だけ、女子だけという空間があっても別にかまわないのではないかと思います。女子が勉学の妨げになるとか、男子だけの環境がエリートを生み出すとか、そんなおかしな発想にとりつかれているわけではありません。ただ、十代のときにおたがい気を使わないで阿呆なことを言ったりやったりしていた時間が、ときどきむしょうに懐かしく、いとおしく思い出すことがあるというだけです。

藤岡教室四谷大塚NET板宿本部校

出口 弘

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